チューリップ(仮)

ガラにもなくこんなことをはじめてる

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2019/06/29 日本時間14:02 ロンドン6:02

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イヤホン越しに、CAの女性の声でまもなく着陸のためシートベルトを腰の低い位置で着用してくださいというアナウンスが聞こえた。

窓の外は藍色、というよりは「ネイビー」の水彩絵の具をきれいな水にとかしたような色をしていた。

まだ左翼の下には雲しか見えなかったが、そのまま眺めていると、確かにまもなく、機体が傾くのがわかった。

空を大きく旋回する機体。

下一面に広がる雲を横目にどんどん下降していく。

そして、深夜便は、夜明けとともに雲を抜けた。

雲が途切れ、視界が開け、大地が顔を出したとき、いネイビーだった空は一瞬のうちに明るみ、この機体の目指す先を示すかのようにそこだけ雲が開けた。

小さく見える大地と、そこに根付く人々の暮らしの気配に、私は自分の体からエネルギーが湧いてくるのを感じた。

大地が近づくにつれ鮮明になる、建物の窓、木々の揺らぎ、車の往来。

機体のタイヤが地面を掴んだとき、これからの生活への期待、予感が、ちょうど心地よい程度に私の体を満たした。

6:20、CAの女性が着陸したことを告げた。

飛行機が止まる。

窓越しに異国の朝日が差し込んでくる。

日本のそれよりも眩しく感じる。

いい日だ。

これからの半年間もきっと。