チューリップ(仮)

ガラにもなくこんなことをはじめてる

チュウリップの幻術

宮沢賢治の文章がよすぎる。いちいちすき。いちばんすき。もしジーニーがいるなら宮沢賢治に会わせてってお願いするくらいすき。

世の中の人はもっと宮沢賢治を読んで評価してほしい。「銀河鉄道の夜」とか「雨ニモマケズ」だけじゃなくて「おきなぐさ」とか「よだかの星」とか「チュウリップの幻術」とか読んで、私のかわりに上手に解説してほしい。

今の気分的には「チュウリップの幻術」を特に読んでほしい。

宮沢賢治 チュウリップの幻術青空文庫

この作品は知らなかった。宮沢賢治の色彩表現と自然描写の巧みさで、春の幻想的な世界が広が一気に花開く感じの絵本。

チュウリップの幻術 りこむん@夕凪の街 桜の国を読んで欲しいの!さんの感想 - 読書メーター

いい。りこむんさんという方の感想を引用させていただいたけど、おっしゃる通り色彩表現と自然描写がすごくいい。読んでるだけでイメージが湧き上がってきてみるみる色づいていって、楽しくてわくわくする。セリフもかわいい。物の例え方や言葉づかいもすき。まぁ「チュウリップの幻術」に限った話ではないけど。

チュウリップの幻術」に限った話でいえば園丁の出入りに合わせて太陽も照ったり陰ったりする感じがかわいい。それから洋傘の質感を有平糖やキャラコで表現しているところとか、ひばりのくだりとか、あと洋傘直しが作業に熱中している様子とか。 

ひばりのくだり

「(中略)しかし一体ひばりはどこまで逃げたでしょう。どこまで逃げて行ったのかしら。自分で斯んな光の波を起こしておいてあとはどこかへ逃げるとは気取ってやがる。あんまり気取ってやがる、畜生。」

「まったくそうです。こら、ひばりめ、降りて来い。ははぁ、やつ、溶けたな。こんなに雲もない空にかくれるなんてできないはずだ。溶けたのですよ。」

洋傘直しが作業に熱中している様子

(おお、洋傘直し、洋傘直し、なぜその石をそんなに眼の近くまで持って行ってじっとながめているのだ。石に景色が描いてあるのか。あの、黒い山がむくむく重なり、その向こうには定めない雲が翔け、渓の水は風より軽く幾本の木は険しい崖からからだを曲げて空に向かう、あの景色が石の滑らかな面に描いてあるのか。)

本当にいいときってどうやっていえばいいんだろう。なんかほめてばっかりだ。全然うまくいえない。冷静になれない。

そもそも「チュウリップの幻術」ってのがいい。私のチューリップのイメージにぴたっとはまっていて「やっぱ宮沢賢治わかってるわぁ」と思う。子どもっぽい可愛さだけどハマると幻想をみせるみたいな、無邪気で且つミステリアスみたいな。

それにしても()で喋っているこの人は誰なんだろう。ってずっと思っていたい。そうやって誰でもないまま謎のまま、誰なんだろうなふしぎだなって読むたびに思っていたい。

ああへたくそだ。こんなんだからいつもほんとうのことが伝わらない。今度もっとちゃんと書こう。

チュウリップの幻術 (日本の童話名作選)

チュウリップの幻術 (日本の童話名作選)

残りの願いは考え中。

やさしい訴え

私は学生の頃、良い方にも悪い方にも特別に目立つような子ではなかった。寝坊による遅刻はよくしたがダルイからみたいな理由でサボることは一度もなかったし、親や教師に手に負えない反抗心を抱いたこともないし、まぁ一度だけ日本史で赤点をとったことはあるけど、それ以外の成績は良くも悪くもなく概ね五段階評価の「3」が並んでいた。友だちもたくさんではないがそれなりにいたし、人並みに恋もした。「3」が似合うやつだった。

そんな私にもものすごく得意だった教科がひとつあった。それは国語だ。すきだった音楽や美術の評価が「4」だったとしたら国語には「7」くらいの評価をくれてもいいんじゃないかと思うくらい、登場人物の気持ちを考えたり古文や漢文を現代語に訳したりするのが得意だった。どれくらい得意だったかというと、小学生の時に読書感想文でショボい賞をもらったり、高校生の時に受けた全国模擬試験のとある国語の問題で正解者3人のうちの1人になったことがあったりするくらい。ちなみにこの模擬試験はなんか結構ちゃんとしたやつです!ショボいけど嬉しかったから時差で自慢してみる。

なぜこの話をしたかというと、このショボい功績を誰かに自慢したかったのと、そんな私が初めて理解できなかった登場人物に出会ったからだ。(なんか自信満々みたいに聞こえるが別に自分の読解力に自信があったわけではない)

 

少し前に読んだ「やさしい訴え」の、新田氏というワケありチェンバロ職人のおじさま。この人がわからない。何度考えてもほんとうにわからない。

やさしい訴え (文春文庫)

やさしい訴え (文春文庫)

この先ネタバレになるかも。いや、説明が下手すぎてならないかも。

とにかくこの新田氏には若くて魅力的でワケありな薫さんという助手がいて、2人は恋愛とかもうそういう次元を超えた先で強く繋がりあっていた。体の関係とかもない。多分。そこに主人公のワケあり既婚者の瑠璃子さんがきて、なんやかんやあって新田氏と瑠璃子さんは惹かれあってお互いに特別な存在だと感じて、そして肉体関係になるのだが…

これってさ作中ではものすごく綺麗に表現されているけど、要は瑠璃子さんは性欲の対象にされただけじゃないの?と思ってしまう。薫さんは心で繋がっていられるだけで満足。でも瑠璃子さんは色気とかすごくてそばにいるとムラムラする。みたいな。ちがうのかな?

でももしそうだとしたら、作中の新田氏はかっこよすぎて違和感があるのだ。それにすぐにそうだと結論づけてしまうのは短絡的すぎるというか、個人的にはもっと別の解釈で納得したい。新田氏にがっかりしたくないというか、何かもっと違う解釈がありそうな気がするし、もし私の解釈が間違ってなかったとしてもそれはそれでよくて、それならそれで新田氏のもっと人間くさい感情を知りたい。とりあえず新田氏が瑠璃子さんに対してどういう気持ちだったのか知りたい。私の浅い経験と知識で導き出した解釈だと、彼はこの先もずっと厚みのない存在のままになってしまう。

納得できる手がかりになりそうなのが、新田氏にとっての瑠璃子さんと薫さんの違いを楽器と音楽に例えている部分。ピアニストの青柳いづみこさんという方の解説にも書かれていたので引用する。

瑠璃子は新田氏にとって楽器だった。でも、薫さんは音楽そのものだ。勝てるわけがない。

【解説】小川洋子 著「やさしい訴え」(文春文庫 2004年10月刊行) | ピアニスト・文筆家 青柳いづみこオフィシャルサイト

そうそう。そうなんですよ。そういうことだっていうのはわかる。でも、結局また同じ話になってしまうけど、こんなに綺麗な表現でまとめられちゃうことに私は違和感がある。

新田氏が、こういう綺麗な表現でまとまるほど世俗を超えた存在だったんだとしたら、肉体関係なんかにならないでほしかったし、肉体関係になるんだったら、もっと人間くさいところがみたかった。

新田氏から肉体関係の言い訳をききたい。

んーそれとも性欲の対象にされることは私が思っているよりも名誉なこと?

まぁいいや。まとまらなくなってきたので終わることにする。

もっと大人になったらもう一度読もう。

おもしろかった。