チューリップ(仮)

ガラにもなくこんなことをはじめてる

深夜徘徊してみた

めずらしく眠れなくて映画をみたり絵を描いたりしていたら、ふとこのまま深夜徘徊してみるのはどうかというアイデアが浮かんだ。それは軽い思いつきだったけど、有意義な眠れない夜を過ごせるとてもいいアイデアな気がした。

目的地は近くの川だ。近くにいい感じの川があって、川沿いがいい感じになっているのだけど、そこを散歩するととてもいい感じの気分になれそうだと前々から思っていたのだ。

スリッパではなくスニーカーを履いてマンションを出た。自分が歩くとアスファルトに砂利がこすれて小さく音がなった。静かだからそれがよくきこえた。見慣れたまちだが、とても新鮮な気持ちだった。思ったよりも人がいない。そして暗い。とても心地よい。「深夜」が私にひっそりと寄り添ってくれているようだった。

15分後、目的の川についた。

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正直、帰りたかった。

はじめは心地よく感じていた静けさが、途中からだんだん怖く感じるようになっていた。不審者がいたらどうしようとか、そういうことをふと考えてしまったのだ。「深夜」につきまとわれているように感じて、すこぶる居心地がわるかった。

それでもやっぱり川はいい感じだった。夜が明けるまであと30分ぐらいだろうから、どうせならと、なんとかそれまではここにいてみることにした。

軍手をはめたおじさんの訝しげな視線を感じながら適度な段差に腰を下ろす。冷えた空気が私の感覚を研ぎ澄ましていく。

川に反射する街灯の光。

高速道路を走るトラックの音。

冷たく柔らかい風。

自転車で犬の散歩をするおじさんと、自転車のスピードで散歩させられる芝犬。

そうしてだんだん明るくなる空。

青白くなる空気とそのにおい。

すずめの鳴き声。

集団で空を飛ぶなんかの鳥。

川の水音。

夜が明けたようだった。夜が明ける瞬間に立ち会えたことがとても光栄に思えた。

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私の足元に誰かが撒いていったパンくずがあったのに気づいた。それを白黒の鳥が2匹ついばみにきた。子どもとそのおかあさんがその話をしながら後ろの道を通り過ぎていった。

私は途中のコンビニで消しゴムを買って、そして帰ろうと思った。

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