チューリップ(仮)

ガラにもなくこんなことをはじめてる

神様のボート

同居人が隣ですやすや寝息をたてている。頬の産毛が月明かりにうっすら浮かんでみえる。手を触れると嫌がるので、こういうときはいつもただそっと眺めている。

私は彼の骨格、特に額から鼻、頬にかけての骨の感じがすきだ。顔に触れたときの皮膚の柔らかさとその下の骨の硬さ、そして頭全体のしっとりとした重みを感じるのがすきだ。

「神様のボート」の葉子も'あのひと'の額や背骨や肩のくぼみなんかの話をよくしていたっけな。彼女の生き方は身勝手すぎて私はすきじゃないけれど、彼女が'あのひと'のことや'あのひと'への気持ちを表現するときの言葉遣いはいつもすごくしっくりくる。

葉子なら、今の気持ちをどんな風に表現するだろうな。

神様のボート (新潮文庫)

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