チューリップ(仮)

ガラにもなくこんなことをはじめてる

120円のホットココアを買うときのお作法

さっき120円のホットココアを買った。紙コップで飲み物を出してくれるちょっとリッチな感じの自動販売機が職場のビルの1階にあるのだ。そこでものすごくくだらないことが起こったので、書いてみようと思う。

 

草木も眠るうしみつどき。ビルの電気は全て消えていて、あたりはしんと静まり返っていた。明かりはビルの薄暗い非常灯と場違いな明るさを放つ自動販売機のパネルだけ、きこえてくるのは自動販売機の微かなモーター音と自分の足音や服の摩擦音だけ。ちょっとこわい。でも心地いい。そんな深夜のビル。

私はいつものように自動販売機の前に立ち、すこぶる自然な仕草でまず10円玉を一枚入れた。次にもう一枚10円玉を入れ、最後に残った100円玉を一枚入れる。いつもならこのあと120円で買える飲み物のボタンがひかるので、私はホットココアのボタンを押して、出来上がったそれにスリーブを巻き、そして休憩室に向かうはずだった。

しかし今夜の自動販売機は違った。最後の100円玉を受け付けてくれないのだ。チャリンと出てきてしまった100円玉をもう一度小銭入れに入れる。チャリン。

ならばと今度は丁寧に入れる。チャリン。

勢いをつけてみる。チャリン。

角度を変えてみる。チャリン。

しばらくそんな試行錯誤が続いた。何パターンか試した後、ようやく100円玉が受け付けられたような手応えを感じた。パネルに目をやると120円で買える飲み物のボタンがひかっている。普段は気にも留めないそのボタンのひかりが、今日はまるで私の功績をたたえているように見える。私は達成感を口元に浮かべながらゆっくりとホットココアのボタンを押した。そして出来上がったそれに断熱用のスリーブを巻き、堂々たる風采でいつもの休憩室へ。

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10円玉、100円玉、10円玉の順に素早く。自動販売機が100円玉を受け付けてくれないときはぜひこのやり方を試してほしい。